逆子になってまず困ったのは、計画していた自宅出産が困難になったことだ。逆子のままだと分類上、自然分娩ということにならず、助産婦だけでは取り扱ってはいけないという法律があるらしい。そこでなんとか逆子を直そうとShokoの努力が始まったのだが、そうは言っても最初のうちはまだまだ深刻さに欠け、いわゆる逆子体操をしたり、あとはこれまでお腹のうさに向かって語りかけていたお願いが
「11月11日に生まれてきてね」(僕)
「2600gで生まれてきてね」(Shoko)
に加えて、「お願いだから元に戻ってね」となった程度だった。しかしそうこうしているうちにアッという間に1ヶ月が過ぎ、医者には37週目までに直らないともうほとんどやばいと言われるに至り、一念発起、もうこうなったら何でもやってやる!と言う意気込みで生活改善に取り組んだのだった。
まずは早寝早起き。6時前には起きて1時間ほど散歩する。それから入浴、ストレッチを行い、その頃僕はやっとベッドから這い出してくる。朝食は野菜中心。食事を作るのは僕の仕事だ。
日中も目を疲れさせては行けないということでTVは観ない。本も読まない。整体と鍼灸に通い、夜は家でもお灸する。両足小指の先と踝の上に各7回、計28個のお灸を艾を丸めて作るのも僕の役割となった。そして10時には消灯・就寝。全く感心するくらい、彼女の人生で最も規則正しい生活を送った日々だろう。おそらく。しかしこんな涙ぐましい努力も空しく、うさは頑として元に戻ろうとしなかった。たまに戻りかかってもまたいつの間にか逆さになってしまうのだ。この頑固さはいったい誰に似たんだろう?