2005年6月29日
考える機械
田中始さん(仮名)の仕事は、計算をすることだ。
来る日も来る日も、計算だけをしている。
ある時、田中さんは計算だけをしているのに嫌気がさし、何かもっと他のことがしたいと思った。
そこで、自分の代わりに計算をしてくれる機械を作ることにした。
出来上がった機械は、田中さんの何倍もの速さで計算することができ、すべて機械がやってくれるので、田中さんはする事がなくなった。
ひまになった田中さんは、計算のほかに何をすればいいか思いつかなかった。
そこで、計算する機械を改造して、わからないことを質問すると答えてくれる機械を作ることにした。
出来上がった機械に、田中さんはさっそく質問をした。
「私は何をしたらいい?」
機械はこう答えた。
「あなたにわからないことは、私にもわかりません」
そこで、わからないことを質問すると答えてくれる機械を改造して、田中さんにわからないことでも、機械が自分で考えてくれる機械を作ることにした。
出来上がった機械に、田中さんは同じ質問をした。
「私は何をしたらいい?」
機械は、田中さんの知らない言葉でしゃべり始めた。時々、合い間にケタケタと笑うような音がする。
田中さんは途方にくれた。
機械はずっと田中さんの知らない言葉でしゃべり続け、あいかわらず合い間にケタケタと笑っている。
しかたがないので、田中さんは前のように計算をすることにした。
ところが、田中さんは計算のしかたを、すっかり忘れてしまっていた。
田中さんは、ひざを抱えて座り、しゃべり続ける機械をだまって見ていた。
ふと思いついて、田中さんは機械の電源を抜いてみた。
すると、機械と田中さんは、止まったまま、動かなくなった。
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