朝、いおは一番に起きると部屋を出て行く。しばらくして「なにこれ、わかんないよー」という声が聞こえてくる。
眠い目をこすりながら布団から出て行くと、いおがカードのようなものを手にして困った顔をしている。どうしたのかと訊くと、「サンタさんからの手紙みたいなんだけど、意味がわかんないの」と言ってカードを差し出す。
表には「衣穂さんへ」とあり、裏には何やら詩のようなものが書かれている。
はなのさく にわ
のうさぎのいえに
もみのきの くつ
りすさんはゆうべ
くまの えをかく
おしいれ こびと
カードは二つ折りにして閉じてあり、開くと中にも文章が書かれている。「何か書いてあるよ。読んだ?」と言って見せると、いおは気づいていなかったようで、手にとって一生懸命読み始める。
メリークリスマス!
ioさんは1年生になって、よこはまへひっこしたのですね。ちゃんとみていますよ。
ioさんのやくにたつものをプレゼントします。
おとうさんとおかあさんのプレゼントは、ioさんがつくってあげてください。
プレゼントのばしょは、うらにかいてあるよ。
いちばんうえといちばんしたをよんでごらん。
いおはカードを裏返すと、じっと読み始めた。そしてしばらくすると「お・く・り・も・の・は・・・と・く・べ・つ・に・わ!」言うが早いか、ベランダへ飛び出した。そして、「あった!」と声を上げる。見ると、ベランダの手すりの下から庭のほうへ袋がぶら下がっている。
袋を引っ張り上げるのを手伝い、一緒に開いてみる。きれいに編まれた紐でとじられた布の袋を開くと、中には10色の毛糸と編み棒の入った籠。いおは大喜び。
「欲しい物だった?」と訊くと、「これがほしいって思いつかなかったからサンタさんにお願いしてなかったけど、一輪車よりこっちのほうが欲しかった!」と答える。「さすがはサンタさんだね」と言うと、「おとうとおかあのプレゼントはいおが作ってってサンタさんの手紙に書いてあったから、おとうにはマフラー編んであげるね」と、いお。うれしいなー。