タンブンと川遊び

2002年02月03日

朝、鶏の声に起こされる。6時半頃にベッドを出る。いおpさんは、まだ寝ている。ビデオカメラを持って家のあちこちを撮って回る。気持ちの良い朝。さすがお山の朝と言う感じで、夏の蓼科のように寒い。起きて来たいおpさんを、ラダ先生の娘さんが抱いてきてくれる。ラダ先生には、14歳と10歳になる二人の娘さんがいるのだが、名前がウサギとリスなのだ。カテーとカタイ。可愛い名前だ。二人ともよく家の手伝いをしている。タイの子供は、本当に穏やかに見える。そんなに喧嘩もしないみたいだ。いおpさんが、何を欲しがってもすぐに譲ってくれるし、なんでも手伝ってくれる。日本の子供には見られない光景だと思う。だいたいお土産にTVゲームを貰ったら、先を争ってやりたがるだろうし、いおpさんみたいな幼児が触りたがっても相手にしてくれないだろう。それが、ここだといおpさんが横に来ただけで、すぐにコントローラーを渡してくれるのだ。ゲームの良し悪しはともかくとして、その自然な光景は、ちょっと感動物だ。

私が撮影している間、いおpさんは裏庭をお散歩。ふと気が付くと、ラダ先生のお母さんが抱いて歩いていた。いおpさんは、本当に年寄り好きだ。静かで穏やかなのが、良いのだろうか。

子供を数人連れて車で朝市に出掛けた。この家に寝ているのは、ラダ先生の両親と娘さん二人だけだったのに、ご飯の仕度は、十数人分を用意しているみたいで、凄い量の買い物になった。大量の新鮮なハーブと共に素麺とカオミャオで朝ご飯。素麺にカレー汁を掛けたものがとても美味しい。あとネズミも。10cmほどの小さなネズミを開いて焼いたものが、結構いける。テーブルの周りには、既に10人以上の人がいる。不思議だ。

今回の帰省目的は「タンブンがあるから。」だそうだ。タンブンというのは、仏教思想をベースにした善行の事で、今回は、お寺建設のための寄付が目的らしい。ラダ先生のお兄さんの一人が、お寺で修行を始めたのだけれど、その寺がまだ立ち上がったばかりで、お寺らしい建物も無いそうだ。それをどうにかしようと街の人たちで寄付を集めるらしい。バナナの木の茎を柱にして、竹を割って作った櫛にお札をはさんでゴムで留めたものを刺していく。ラダ先生が学校で集めたお金を出した。私もついでにタンブンさせて貰う事にして100Bを出す。お札をはさむ作業が結構楽しい。ビデオに撮っておこうとしたら、バッテリー切れになってしまった。残念。トラックの荷台に、大人も子供もぎっちり乗ってお寺に出掛ける。100人以上の人たちが、簡単なブロック建ての(でもロクに壁も無いような)場所に集まっている。駄菓子や色紙で作った飾りがあちこちに揺れていて、まるで寺山の映画の世界。実に不思議でシュールな光景だ。楽しい。お坊様の居る所へお金を奉納しに行く。皆でお経を受けて、水をグラスに入れ替えて、お金を奉納。その後は、食事を振舞われた。なかなか豪華な食事だ。どぶろくのようなお酒もある。外で偉そうなお坊様が豪華に飾られた玉座に座って、マイクでお経を読んでいる。らしい。まるで民謡のような節がついていて、「いい喉を聴かせてもらってる」って感じだ。大きなシートで屋根を張ってあって、そこに100人くらいの人たちが座ってお経を頂いている。楽しい。

家に戻って、いおpさんと少しお昼寝。2時過ぎに起きると、川へ魚を捕りに行こうと誘われる。家の裏を車で1・2分行った所にほとんど流れも無いような川がある。幅は、4~5mほどか。木を一本渡してある橋に子供達と並んで、足を水につける。いつもよりも水が多いそうで、結構冷たい。いおpさんも早速、裸になって一緒に橋に座ると足をバチャバチャさせている。そのうちに子供達が、服を着たまま、次々と水に入って泳ぎだす。水は、淡い抹茶色で濁っている。5cmくらいしか下が見えない状態だけれど、水は綺麗だそうでシジミが住んでいる。考えると、一見不潔そうに見えるこの川の水は、シジミが生息しているほど綺麗なものだ。それに引き換え、プールの水は清潔だけれど、殺菌のために塩素が大量に使われていて、何の生物も生息できない。動物である人間がいる場所としては、川の水のほうがずっと安心できる気がする。病気のリスクも考えに入れたとしても。そういえば、プール熱の原因て何なのだろう。

ラダ先生も川に浸かって、小さな網で川海老や小魚を取っている。いおpさんも抱かれて水に入ったけれど、水の冷たさに驚きに悲鳴をあげる。私も誘われて水に入った。当然、服を着たままだ。変な感じだが悪くない。水は、私の首辺りまである深さ。いおpさんよりも少し大きな子供が、藤垣先生の背に負ぶわれて泳いでいるのを見て、いおpさんも私に手を伸ばすので負ぶってやった。泣くかと思ったら、喜んで足をバタバタさせている。水が濁っているので、おぼれて沈んだら探せないと思うと、さすがに不安でいおpさんの手はしっかり首のところで握って、背負ったまま、泳がせてやった。喜んでいる。「自分で、自分で。」と言うので、前で手を握って浮かせて泳がせて見たら、案外泳げている。楽しそうだ。子供達に水を掛けられたりして、大騒ぎで喜んでいる。暫く泳いでいたら、いおpさんの唇が紫色になってきたので、上がろうとすると嫌がる。でもその声が震えてきたので、無理やり上がらせる。橋に座って陽にあたって温まる。「寒いんじゃないの?」と聞かれると「ぜんぜん、寒くないもん。」とがたがた震える声で答えるので大笑い。私に「水に入る。水に入る。」と煩い。暫く暖をとって、それでも「泳ぎたい」と盛んに言うので、また水に入る。子供達は上手にシジミやタニシを足で捕っている。それをいおpさんが水に浮かせたバケツに入れている。ああ、なんて楽しいんだ~!

魚や貝を捕り終えると、今度は、次々にシャンプーで頭を洗い出す。「そんなの、ありだろうか?」と物凄く驚いた。その自然な感じは、しょっちゅうここへ体や頭を洗いに来ていると言った風だ。それでもシジミは、生息しているのか。自然の自己治癒力は素晴らしいなあ。ここの人たちにとっては、まだ自然なんて大切にするようなものではない。いくら使っても、まだまだ溢れているものだ。でもエコ教育も大切だと思うぞ。

陽が傾いてきたので、家に戻る。着替えて、いおpさんは、また少し寝る。たくさん泳いだので疲れたのだろう。夕食にもネズミが出た。今度は、20cmくらいの大きなもの。肉の食べでがあって、とても美味しい。ネズミは冬の間しか食べないそうだ。たぶん、夏は、草が生い茂っていてネズミを見つけ難いからだろう。簡単に夕食をご馳走になって、バンコクへ戻る。

家に戻ったのは、11時過ぎだった。お疲れ様、いおpさん。盛りだくさんで、映画のように楽しい一日だったね。

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Posted by shoko at 2002年02月03日 22:52