誕生まで 第10話

超安産、そして翌日退院

99.11.11~12

99.11.11

逆子ということで、あんなに大騒ぎしたのが嘘のように、うさはあっさりと生まれてきた。母子手帳の分娩所要時間の欄には2時間43分と記されているが、実感としては2時間もかかっていないと思える。大体、出産時刻の3時11分から2時間43分さかのぼった0時半ごろには、僕は助産婦さんにまだまだかかるからと言われて、ひと眠りしようとしていたのだから。終わりよければすべて良しということで、今までの苦労は一瞬ですべて良い思い出に変わった。たまたまラッキーだったといえばそれまでだが、やはり帝王切開を選択せず最後まで自然分娩にこだわってよかったと、あらためて思う。

検査などもひと通り終わり、部屋へ戻る。育良は母子同室が基本なので、うさも一緒だ。家族も泊まれる部屋をお願いしたので、親子三人で寝られる。麻由美さんは始発で帰り、また午後来てくれる事になった。タオルに包まれたうさを眺めながら、僕は幸せな気分で布団に入った。疲れていたのか一瞬で眠ってしまったように思う。看護婦さんが1時間ごとに様子を伺いにきてくれるので、熟睡はできなかったものの、朝まで寝てだいぶ疲れは取れたようだ。Shokoはほとんど寝ていないようだったが、気が張っているためか疲れた様子は見えなかった。やはり母は強いのだろうか。なりたてでも。

さて、早朝Shokoの実家とぼくの実家に無事生まれたと電話を入れた。Shokoの両親は東京に住んでいるのでお母さんがすぐ来てくれることになった。病院ではぼくの食事はつかないので食べ物を買ってきてもらって助かった。

Shokoもパンとサラダの朝食を取り、落ち着いたところでぼくは一旦うちに帰ることにした。受け入れの準備をしつつ、あちこちに報告のメールを出した。やがて次々にお祝いのメールが返ってくるのが何とも言えず嬉しかった。

夕方退院用の荷物を持ってまた病院に戻る。今日一晩泊まってお許しが出れば明日退院するつもりなのだ。明後日の予定の検査を無理を言って明日にしてもらった。Shokoは1日も早く家に帰って過ごしたいと言う。別に病院の居心地が悪いって訳ではないのだが。

夕食は和食で、非常に美味しかったらしい。ぼくは駅前で買ったフレッシュネスバーガー。昨日(というか今朝)あまり寝てないせいもあり、食後はすぐ横になることにした。でもうさがしょっちゅう泣くので眠れない。Shokoが乳首をふくませる。出ているのかどうか知らないがチューチュー吸っている。うーなんて可愛いんだ。でも深夜3時ごろ、あんまり泣くので看護婦さんが来て「ちょっと見ましょうか」といって連れて行ってしまった。ぼくらはすぐ戻ってくるものと思って起きて待っていたが、全然戻ってくる気配がないので諦めて寝た。結局朝(6時過ぎ?)まで帰ってこなかった。おかげでゆっくり眠れはしたが、ちょっとさびしかった。

99.11.12

起床。この部屋でもう何日も暮らしているような気がする。和室に布団なので病院という気がしない。旅館に泊まってるみたいだ。お風呂もついているが、分娩前に入るひまがなかったので結局一度も使わず。おむつを洗って干した以外は。

午後、近所に住む友人に連絡し、遊びに来てもらった。何か欲しいものは?と言うので水を買ってきてと頼んだら、2リットルボトルを1ダース買ってきてくれた。今日退院するとは知らず。

検査も無事済み、問題なく退院のお許しが出た。夕食をどうしますかと聞かれ、Shokoはおずおず
「食べてからでもいいですか?」
よほど食事が美味しかったらしい。どのみち渋滞を避けたいので遅いほうがいい。

で、夕食も済ませ、荷物をまとめて退院の準備。shokoは「いいお産の日」で買ったスリングでうさを抱く。水は入院してる方々に分けてくださいと置いてきた。浦野先生は仮眠中だそうで挨拶できなかった。ぼくは外へ車を拾いに出る。

うさが車の中で泣いたりしないか心配だったが、おとなしく寝ていたのでひと安心。乗ったタクシーは運転手さんが途中までメーターをあげるのを忘れていて、料金半額くらいですんでしまった。ラッキー。

家に着いた。ようこそ、うさ。楽しい我が家へ。

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