三輪車

今日もホメオパシーの勉強に出かけるshokoを、駅まで見送りに行ったとうちゃんといおぴー。その帰りに西友でフリーマーケットをやっていて、三輪車が売られているのをいおぴーが目ざとく見つけた。そういえば、三輪車買ってあげると言いながらすっかり忘れていた。いおぴーが買いたいと言うので、買うことにした。500円。店を出している父親の傍で元の持ち主らしき少年にお金を渡すと、はにかみながらも誇らしげだった。

さっそく公園に行って、練習をする。ところが、公園の敷地内だと小石や砂をかんでしまって上手く漕げない。公園の脇のアスファルトだとよく走れるので、土だと走れないものと決め付けて、道路を走りたがるようになってしまった。困ったものだが、早合点して聞く耳持たず楽なほうへと流れるのはとうちゃん似なのでしかたがない。

はじめてのおつかい

夕方、絵本を読みながらタイの話をしていたら、よくアイスを買ってもらった事を思い出したらしく、「アイス買いに行こうよー」と言い出したいおぴー。「とうちゃん行かないよ。いおちゃん三輪車乗って一人で行ってくれば」などと言ったのがいけなかった。三輪車に乗りたくて仕方がないいおぴー、わが意を得たりとばかり「うん、いおちゃん行って来るよ!一人でアイス屋さん行けるよ」と言うや、見たこと無いほどテキパキとひとりで着替えを済ませる。できるんなら毎日やれよと言いたくなる。「お金ちょうだい。いおちゃん5バーツしか持ってないの」といおぴーが言う。5バーツではアイスは買えまいと苦笑しつつ500円玉を一つ持たせてやる。土台無理とは思いつつ、とうちゃん、いおぴーがどこまでできるか見てみたい気持ちもあり、気をつけてねと送り出した。

しばらく間をおいてそっと玄関から覗いてみると、三輪車もいおぴーの姿もない。予想以上の素早さにあわてて道路まで出ると、数十メートル先で三輪車にまたがったいおぴーが大家さんと話している。「いおちゃん、ひとりでアイス買いに行くの」といおぴーが言うと「一人じゃ行けないでしょ。ほら、おとうさんいるわよ」と電柱の陰から顔を出したとうちゃんを見つけてしまった。振り向いたいおぴーは「あっち行け!」と怒鳴る。大屋さんにそんなこと言うもんじゃないとたしなめられ、「お部屋で待ってて」と言い直すいおぴー。この辺は案外素直だ。とうちゃんは仕方なくいおぴーに近づいていき、「いおちゃん、お店はあっちだよ」と反対方向を指し示す。最寄のコンビニがある方角だ。いおぴー、えっ?という顔になり、照れ笑いしながら「こっちと思っちゃった」と言いながら引き返してくる。そして「おとうさん、お部屋で待ってて」と言う。とうちゃんが「公園で遊びながら待ってるから。気をつけて行ってきてね」と言って公園のほうにスタスタ歩き出すと、急に心細くなったと見え、「じゃあいおちゃんが公園のところまで送ってあげる」と言ってとうちゃんに付いて来る。公園でも「これ何の花?」なんてしきりに聞いてきたりしてなかなか離れようとしないので、「じゃあ、とうちゃんは家で待ってるから、いおちゃんはアイス買ってきて」と言って帰ろうとすると、「あっ!そういえば、いおちゃんドアとどかないから開けられないんだった!」なんて言い出す。「トントントン、ただいまーって言えばすぐ開けてあげるよ」ととうちゃん。いおぴーはようやく観念したように、「じゃあ行ってくるからね。なるべく早く帰るからね」と言って三輪車を漕ぎ出した。

去っていくいおぴーを電柱の陰から見守っていると、後ろから車がやって来た。どうしようかと思ったが車に気づいたいおぴーはサササとゴキブリのように道の端に寄り、事なきを得た。しかしこっちを向いたいおぴーに気づかれてしまった。車にそうとう動揺した様子のいおぴーは、今度は「来てー」と手招きしている。傍まで行くと丁度5時を知らせるチャイムが鳴り出し、これですっかりいおぴーはびびってしまって「もう夜だよ。こわいから一緒に行って」と言う。「いいよ」と答えると「じゃあ、後ろからついて来ていいよ」だと。いいよじゃないだろ。

コンビニのある通りまでたどり着く。道を渡ればコンビニなのだが、慎重派のいおぴーは遠くに車はおろか、自転車が見えただけで動こうとしない。たっぷり5分ほど待ってようやく道を渡ることができた。「おとうさん三輪車持って待ってるから、行っておいで」と言うと、「じゃあ買ってくるね」と言って店に入っていくいおぴー。

しばらく間をおいてとうちゃんも店に入ると、いおぴーはしゃがみ込んで棚に並んだ玩具を眺めていた。そしてとうちゃんに気づくと「アイスどこにあるの?」と訊く。とうちゃんが「お店の人に訊いてみれば」と言うと、レジまで行って「アイスどこですか?」とちゃんと訊けた。店の人にアイスのケースまで案内してもらい、ケースの蓋を開けてもらって中を覗きこむいおぴー。蓋は手で押さえていないと閉まってくる。店の人に悪いのでとうちゃんは近づいて行ってすみませんと言って店の人と替わった。いおぴーが「2個買うの?」と言うので「いいよ」と答えると、「3個は?」とまた訊いてくる。「じゃあ、おかあさんの分も買おうか」と言うと「いおちゃんと、おとうさんと、おかあさんのね」と言って3個とりだした。

3個のアイスを胸に抱えるようにしてレジまで持って行き、並んで待ついおぴー。順番が来ると、「はいどーぞ」と言って差し出す。ちょっと違う。巾着から500円玉をとり出し、店員さんに渡す。お釣りをもらって巾着にしまう。ちゃんとできた。嬉しそうにとうちゃんのところに走ってくる。

無事目的を果たし、すっかり自信をつけたいおぴーさん。店を出て道路を渡ったところで、「おとうさん先に帰ってて。いおちゃんひとりで帰れる。ただいまーって言ったらすぐ開けてね」と言うので、じゃあ気をつけてねと先に帰る。対向車が来ないのを確かめつつ、門の所で隠れて待っている。三輪車を漕いで帰ってきたいおぴーは、とうちゃんに気づかず、門を自分で開けて三輪車を自転車置き場に片付け、郵便受けの中を確認した後、玄関のドアの前で「トントントン。ただいまー!」と言っている。とうちゃんはそっと後ろから近づき、「お帰り~!」といおぴーを抱きしめた。

全部ひとりだけではなかったけれど、とにもかくにも、いおぴーが自分の力で、自分の意思で、買い物に行って来ることができた。いおぴーのはじめてのおつかいだ。よくがんばったね。お疲れ様でした。

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