未明
夜中に目を覚ましたいおぴー、「お腹がすいた」と言い出したので、カオニャオを食べさせる。カオニャオとかあちゃんの寝おっぱいでしばらくはおとなしくなったものの、白々と夜が明け始めるころにはバッチリと起き出してしまい、「あさですよ~!」と大声で叫んだり、誰も相手にしないと今度は泣き喚いたりと、隣の部屋はおろか通りの向こうにまで響き渡っていそうな騒音を撒き散らす荒れっぷり。ほとほと参った。
朝
デジカメの画像をPCに移すため、またUSBケーブルを借りに行ったら、キッチンでシムさんが中華鍋を振るっていた。シムさんは元コックだそうだ。
朝食は、ご飯に焼き魚と野菜炒め。和食が出るとは思わなかったのでちょっとびっくりした。美味しかった。
今日はshokoが授業のため、一日とうちゃんといおぴーだけですごすことになる。おそらく公園で遊ぶのがメインになるが、あわよくば買い物や観光もしたいと、一応観光ガイドもチェックする。それから、USBケーブルとかshokoのPC用のLANカードなどを買いたいので、シムさんに最寄のPCショップを尋ね、ハマースミスにMAPLINEという店があると教えてもらう。シムさんは親切に地図を書いてくれ、バスの番号まで書き込んでくれた。
公園
ご飯の残りをもらっておにぎりをつくり、果物と一緒にタッパーに詰める。公園で食べる昼ごはん用。まだ9時だが、宿にいてもいおぴーが騒がしくて皆の迷惑になるだけなので、とりあえず外へ出かけることにする。いおぴーは早速、公園へ行くと言って聞かないので、まず近所のシェパーズブッシュコモン(うろおぼえ)という公園へ。この公園は2本の道路に挟まれた細長い三角形をしていて、その一部が児童遊園になっている。まだ時間が早いためか、他に遊んでいる子供は一人もいない。いおぴーはノルマをこなすように遊具の一つ一つを順番に遊んでいく。遊び残したら損だとでも考えているようだ。そうかと思うと、時々リスを見つけては追っかけたりしていた。
小一時間遊んだ後、そろそろ買い物に行きたいと思い、いおぴーに「二階建てバスに乗らない?」と持ちかけた。いおぴーも「二階建てバス乗りたい!」と同意したので、そのまま出かけようかと思ったが、遠出するにはベビーカーがないと不便かなと思い、一旦宿に戻ることにした。
ハマースミス
ベビーカーで再び出かける。お金がないので、まずATMでキャッシングし、バスに乗る小銭を作るためにスーパーに入った。パン(レーズンロール4個入り)とジュースを買う。シムさんが教えてくれた番号のバスを待ち、1分も待たないうちに来たバスに乗り込む。新しい型のワンマンバスだ。料金がわからなかったので、行き先を告げて幾らか尋ねると、運転手は75ペンスと答える。が、とっさにコインの種類の見分けがつかず、適当に何種類かの小銭を手のひらに載せて差し出したら、運転手は1ポンドを取って、お釣りをくれた。そして、いおぴーと畳んだベビーカーを抱え、二階に上がるための階段に向かうが、登り始めたとたんにバスが発進してしまい、やたらと揺れるので上がるのに一苦労した。乗客が少なかったので二階の最前列に陣取ることができ、いおぴーは大満足だった。
ハマースミス駅でバスを降り、早くも「お腹がすいた」を連呼するいおぴーをなだめつつ、地図を頼りにPCショップへ向かう。PCショップ(というか電器一般を扱う店だった)では、たまたま子供用電動バイクのキャンペーンをやっていて、いおぴーはそれに乗りたがって、またもやギャースカ言い出した。しかたなく詰まれた箱の上から展示品のバイクを下ろし、乗らせる。勝手に乗らせていいものか微妙だったが、店員に話しかけるのも面倒なので、開き直って勝手に遊ばせた。いおぴーはあちこちに展示してあるすべてのバイクに乗りたがり、結局3台も乗らせることになった。ちょっと顰蹙モノだった。いおぴーは「バイク買って!」とひたすら繰り返していたが、「今は買っても持って帰れないから、今度おかあさんと来た時ね」とその場しのぎでごまかす。USB変換コネクタを買う。クレジットカードで支払い、漢字でサインしたら、若い店員は呆れた顔でそれを見つめ、とうちゃんに向かって「You crazy!」と言った。漢字知らんのか、ボケ!と思いつつ店を出た。
また公園
ハマースミスの駅からそう遠くないブルックグリーンという公園まで15分ほど歩く。いおぴーはベビーカーでぐったりしている。すでに腹ペコらしい。公園に着くと早速、ベンチに座ってお弁当を食べることにした。しかし、いおぴーはスーパーで買ったパンしか食べない。ジュースもぐびぐび飲んだ。今日は昨日にも増して天気が好く、公園の芝生にはゴロゴロと寝転がっている人がたくさんいた。中には上半身裸の人もいる。昼食を終え、遊具のある自動遊園の方まで芝生を横切って歩いた。けっこう遠い。この公園も子供は誰も遊んでいなかった。ロンドンの子供は公園で遊ばないのだろうか。いおぴー独占状態でしばらく遊ぶ。そのうち、ちらほらと母親に連れられた幼児が来始めた。人がいなかったのはどうやら単に昼時だったからのようだ。
とうちゃんはいおぴーのせいで寝不足気味なので、ベンチで昼寝でもしたいところだったが、いおぴーがそうはさせてくれない。いおぴー、しきりに周りの子供たちの口真似をして「アイ ペーン」とか「アン ティー ユー」とか言っている。本人は英語をしゃべっているつもりらしい。イントネーションはなかなか英語っぽく、時々「アイドンノー」など意味の通じる事も言うので、耳は良いようだ。そして、とうちゃんにも「英語だけしかしゃべっちゃダメ」と英語でしゃべることを要求する。しかたなく、いおぴーよりずっとたどたどしいイントネーションの英語で話しかけるが、それに対するいおぴーの返事はまったくの意味不明なので会話にならないのだった。
ここのアスレチックがたいそう気に入ったようで、かなり長い時間遊んでいた。とうちゃんそろそろ切り上げて帰るきっかけがほしいと思っていたところへ、騎馬警官がやってきた。かっこいい。ちょうどいいきっかけと思い、いおぴーを呼んで、「馬に乗ったお巡りさんがいるよ。追っかけよう」と誘った。いおぴーも同意したので、ベビーカーにいおぴーを乗せ、後を追うことにした。しかし公園の門を廻って出たり、信号にひっかかったりしているうちに、どんどん離されてしまった。遠くに見える馬のお尻を見ながら付いて行くが、馬は悠々と車を停めながら道路を渡り、道の反対側の警察署に入っていってしまった。結局追いつくことができずに「残念だったね」と言い合いながら引き返す。とうちゃんはこのまま帰ろうと思っていたのだが、いおぴーは「また公園で遊ぶ」と言う。まだ遊ぶのかと内心呆れたが、どうせ帰ったところでいおぴーの子守をするのは変わらないので、いおぴーの気の済むまで付き合うことにした。
公園に戻ったら、今度は子供であふれかえっていた。皆制服を着ていた。学校が終わった小学校低学年の子供たちが流れてきたようだ。大きい子ばかりでいおぴーは居場所がなく、隅っこで砂遊びを始めた。どこからか拾ってきたビニール袋に砂を詰めたりして、ひとりでお店屋さんごっこをしている。すると、近くの遊具で遊んでいた女の子のひとり(7歳くらいか)が、いおぴーの遊びに興味を持ったらしく、しばらく眺めていたかと思うと、ごく自然に参加してきた。いおぴーは、はじめこそ警戒していたが、だんだん自然にふたり遊びを始めた。砂の中で互いの指を探り合って、「コンニチハー」とやったりしてふたりで笑いあって、とてもいい感じだ。子供はいいなあと思った。
けっこうな時間が過ぎ、「そろそろ帰ろうか」と何度目かの声をかけると、「帰っておやつ食べる」という返事が返ってきた。だいぶ疲れて、お腹もすいたのだろう。できたばかりの友達にさようならを言って公園を後にする。シェパーズブッシュまでは歩いても20分弱なので、いおぴーを抱えてバスに乗るより楽と思い、のんびり歩いて帰った。いおぴーはベビーカーで寝るかなと思ったけれど、ずっとおしゃべりをして、寝なかった。突然「おとうさん、バナナ食べるとき、もし皮がファスナーだったら、どうする?」なんて言い出してとうちゃんを笑わせてくれた。ずいぶん気の利いたことを言うと思ったら、そういう絵のポスターが街のあちこちに貼られていたのだった(後で知ったがThe Dandy Warholsのアルバムの広告だった)。
爆発
宿に帰ってきた。5時になっていた。リビングにいると、いおぴーが騒いで迷惑になりそうなので、部屋で遊ぶことにした。隙あらば寝かそうという構えだ。
まずは折り紙遊び。いおぴーのリクエストに答えて、とうちゃんが折りまくる。折り紙はけっこう楽しくて、はまる。しばらくとうちゃんも夢中になって折り紙であそんだ。折り紙に飽きると、今度はベッドの上で、これできる?ゲーム。これは、とうちゃんといおぴーがよく家でもやっている遊びで、まずどちらかが、ヨガさながらの変なポーズをとり、「これできる?」と相手に真似させる。真似できなかったら負け。これを交代で繰り返す。とうちゃんがわざと失敗してベッドから転げ落ちたりすると、いおぴーはもう、ゲラゲラと目に涙を浮かべて大笑いしている。そうとうハイになってきている。
おやつを食べたいと言い出したので、弁当の残りの果物を食べさせようとしたが、嫌がり、「お菓子じゃなきゃ食べない!」と言って喚き出す。そろそろピークだ。そして、「おかあさんは?おかあさんは?おかあさんのところに行きたい」と愚図りだした。このあと、ひとしきり大泣きして、泣き疲れて眠るといういつものパターンになるに違いないので、ベッドに入れることにした。が、これを嫌がり、いつもに増してひどい金切り声を上げるいおぴー。かあちゃん恋しさと眠さでパニックになっている。環境が違うのでその分パニックの度合いも強いだろう。このままでは周りに迷惑がかかる。夕食時なので尚更顰蹙だ。少しでも声を抑えようと、とうちゃんも一緒に頭から布団をかぶる。いおぴーは布団の中で暴れ、しばらく泣き喚き続けていたが、いつしか眠りについた。とうちゃんも一緒に眠ってしまった。
shokoから電話があり(受信専用の携帯電話を借りている)、目を覚ました。9時を過ぎていた。いおぴーはぐっすり眠っている。起きだして、PCに向かう。今日買ってきたコネクタを使ってみようと取り出したら、オスメス逆だった。つかえねー。ショック。
10時過ぎ、shokoが野菜とドレッシングとスープ(と自分のビール)を買って帰ってきたので、サラダを作ってダイニングで食べた。生のニンジンとマッシュルームが驚くほど美味しかった。いおぴーはずっと眠っている。
コメント