救急車

朝寝ていたらお腹が痛くなってきた。なんの痛みかなと思いつつ、寝たまましばらく様子を見ていたが、痛みはどんどんひどくなり耐え難くなってきた。油汗が出てのた打ち回るレベル。痛むのが右下腹部なので、もしかして虫垂炎かも、そういえばオヤジが盲腸で入院したのはいつだっけ、あれはたしか札幌オリンピックが見られなくなって口惜しがっていたのだから昭和47年の2月だ、するとオヤジはあの時まだ37歳だったのか、若いな、などどあれこれ考えて痛みから気を逸らそうとしたがそれも限界を迎え、藁にもすがる思いで出かけているshokoの携帯に電話した。痛みを訴えると、マグフォスをお湯に入れて云々と悠長に説明を始めるので、痛くて動けないからとりあえず帰ってきてほしいと伝えたところ、「無理。救急車呼べば」と言って電話を切られた。鬼。

我慢して治まる痛みならいいが、未体験の激痛だけに不安はつのり、背に腹は変えられないので119番に電話した。状況を説明し、救急車が来ることになったので、着替くらいはしておかねばと、無理して起き上がり着替える。すると、気のせいか救急車が来ることになって安心したせいか、痛みが多少ひいた気がする。このまま痛みがなくなって何でもなかったらどうしようと逆に不安になったが、また波のように痛みが襲ってきてひと安心。このまま何とか病院までは痛みが続いてくれと、救急車を呼んだ後ろめたさから訳の分からない心理状態に陥っていた。

救急車が到着し、救急隊員が玄関で声をかけて入ってきた。「歩けますか」と問われたので、「なんとか歩けます」と答え、起きて玄関へ向かおうとすると、隊員は「歩けるってー」と外で待機するもう一人の隊員に向かって声を掛ける。この声が如何にも「歩けるくらいなら救急車呼ぶなよ」と言っているようでますます後ろめたさでドンヨリする。自力で這うように救急車に乗り込み、横たわる。なんかいろいろ質問されるが、「朝から便は出たか」とか明らかに便秘を疑うような質問にゲンナリ。その間にも通信している様子が耳に入るのだが、最初に問い合わせた救急病院には断られ、救急車はなかなか発進しない。そして、今度は戸締まりはしなくていいのかとしつこく訊いて来る。家の者がすぐ帰るからと答えると、近くにいるなら電話して来てもらえというので、しぶしぶまたshokoに電話する。shokoはこのまま仕事に行くので帰れないというので、隊員の人にそう伝えると、じゃあやっぱり戸締りしろという。大きなお世話なんだが、戸締りしない限り発進しなさそうな勢いなので、今締めてしまうと子供が帰ったときは入れなくなる、家のことは家人から近所の人にお願いすることになったと散々言い訳してようやく納得してもらい、その間に行き先も決まったようで、救急車は発進した。近所の人が野次馬となって見守っているところを想像するとまた気が滅入る。

病院に着くと、しばらく救急用ベッドに放置。もっと重篤な救急患者がいると思えばやむを得ない。痛みは相変わらずだが、ここまで来たらもうどうにでもなれという気分で、心を無にして待つ。すると、カーテンの向こうから、担当医が研修生に問診の心得を説く話し声が聞こえてくる。おいおい練習台かよ。事前準備を終えたらしくカーテンが開き、頼り無げな青年がたどたどしく話しかけてくる。幼児に話しかけるような口調に苦笑をこらえつつ、質問に答える。研修生は、時々後ろから担当医に突っ込まれたり叱られたりしつつ、なんとか問診を終えた。そして血液検査のため血を採る際には、なにやら失敗をやらかしたらしく(眼を閉じて横になっていたので何が起きたのかわからなかった)、「ナニやってんの?アンタ!」というベテラン看護婦の怒声。スイマセンと謝る研修生。あとで見たらシーツが血まみれになっていた。。。またカーテンが閉じられ、すぐ向こう側から話し声が聞こえてくる。患者に聞こえようが聞こえまいがどうでもいい感じだ。どうやら問診の結果は虫垂炎と結石が五分五分で、後は検査結果次第らしい。検査で結石とわかれば、「泌尿器科へ丸投げでいいよ」との担当医のお言葉。

またしばらく放置された後、車椅子に乗せられ、検査に向かう。CTを撮った後、またしばらく放置。相変わらず痛みは続いているが、もう大分慣れたのと、どうやら結石らしいから、これはひたすら我慢する以外にないと腹をくくり、眠りに逃げる。

起こされて先程の担当医から説明を受け、泌尿器科へ「丸投げ」される。診察の前に採血室で待たされたが、その間に痛み止めの座薬をもらった。泌尿器科の診察はほんの5分。CTの写真を見せられ、尿路結石だが、小さいし出口に近いから2週間以内に自然に出るだろうとのこと。痛み止めを処方されて終了。痛み止めが効くまで採血室のベッドでしばらく休んでいっていいと言われたので、お言葉に甘えて小一時間休む。

痛み止めが効いたか、痛みが治まったのでそろそろ帰ろうと看護婦さんに声をかけると、カードを渡された。これで精算してくださいとのこと。今時の病院は精算時に待たされることなく機械で自動精算してさっさと帰れると知って妙に感心した。検査代がバカ高く、全部で2万円近くかかった。痛み止めはどうせ使わないから処方箋は捨てた。どうやって帰ろうかと少し迷ったが、所在なく家まで歩いて帰った。いおに救急車に乗ったと自慢しよう。

コメント

  1. naococco より:

    いつの間にか再開してたんだね。
    公平(長男)と読んで、げらげら笑った。
    「お母さんも(ブログ)やれば?ネタに困らなそう」
    そうは言うけどねぇ、意外と難しいんだよね。
    でも家族っていいね。何気ない時間を共有する幸せ。

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