考える機械

田中始さん(仮名)の仕事は、計算をすることだ。

来る日も来る日も、計算だけをしている。

ある時、田中さんは計算だけをしているのに嫌気がさし、何かもっと他のことがしたいと思った。

そこで、自分の代わりに計算をしてくれる機械を作ることにした。

出来上がった機械は、田中さんの何倍もの速さで計算することができ、すべて機械がやってくれるので、田中さんはする事がなくなった。

ひまになった田中さんは、計算のほかに何をすればいいか思いつかなかった。

そこで、計算する機械を改造して、わからないことを質問すると答えてくれる機械を作ることにした。

出来上がった機械に、田中さんはさっそく質問をした。

「私は何をしたらいい?」

機械はこう答えた。

「あなたにわからないことは、私にもわかりません」

そこで、わからないことを質問すると答えてくれる機械を改造して、田中さんにわからないことでも、機械が自分で考えてくれる機械を作ることにした。

出来上がった機械に、田中さんは同じ質問をした。

「私は何をしたらいい?」

機械は、田中さんの知らない言葉でしゃべり始めた。時々、合い間にケタケタと笑うような音がする。

田中さんは途方にくれた。

機械はずっと田中さんの知らない言葉でしゃべり続け、あいかわらず合い間にケタケタと笑っている。

しかたがないので、田中さんは前のように計算をすることにした。

ところが、田中さんは計算のしかたを、すっかり忘れてしまっていた。

田中さんは、ひざを抱えて座り、しゃべり続ける機械をだまって見ていた。
ふと思いついて、田中さんは機械の電源を抜いてみた。

すると、機械と田中さんは、止まったまま、動かなくなった。

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